Linux録画サーバのfoltia ANIME LOCKER, Chinachu, epgrec UNAを比較してみた
最終更新日:2016/12/17
現状、Linuxで録画サーバを構築しようと思ったらfoltia ANIME LOCKER, Chinachu, epgrec UNAの3つに絞られます。去年から録画サーバを作りたいと思っていたのですが、実際問題としてどれが自分にとって最適なのか分からなかったので比較してみました。
2016年9月追記:この記事は2015年6月に投稿したものです。内容的に古くなってしまった箇所も増えたため、記事の内容を全面的に改稿しました。
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foltia ANIME LOCKER
foltia ANIME LOCKERは有料のソフトです(ダウンロード版が7,757円)。オープンソースのfoltiaを大幅に改良したものがfoltia ANIME LOCKERになります。
foltia ANIME LOCKERには無料評価版もリリースされているので、今回はこちらを実際にインストールして評価しました。なお、デモサイトも用意されているので、画面や操作方法が事前に確認可能です。
インストールはブラウザから操作するだけで完了します。Linuxなのにログインせずにインストール可能なのはびっくりしました。パソコンの知識が多少必要になりますが、PC初心者でも十分にインストール可能です。3つの録画サーバの中では最も簡単にインストールでき、1時間程度で完了します。
機能的には録画番組のテレビ視聴、CMカット、MPEG4変換、スマホからも可能なライブ視聴、DLNA対応など必要な機能が十分揃っており、デザインも洗練されていますし使い勝手が良いです。ただし、アニメに特化した製品だけあって、アニメをあまり見ない人には不要な機能も多いです。
2週間分のアニメ放送予定表、アニメ新番組リスト、ネットラジオの超!A&G+録音/録画など、毎日アニメを見る人にとっては至れり尽くせりな内容です。全国のアニメ関連番組がいつ放送されるのかも確認できます。しかし、アニメファン以外には不要な機能です。
アニメに特化しているとは言え、もちろん他の番組も録画できます。ただし、番組表が使いづらく見にくいのがこのソフトの最大の欠点だと思います。8局ずつしか表示できないので、地上波は良いですが、多チャンネルのBSとCSは目当ての番組を表示するのに苦労します。
PCをfoltia専用機として動かすなら、普段アニメを見ない人でも選択肢として有りです。機能は充実しているので、お金を払う価値は十分あります。
注意点として、ベースとなるLinux OSがCentOS 6.7と古いです。CentOS 6.x系の最新バージョンは6.8であり、CentOS 7.2が2016年9月現在の最新バージョンです。Linux OS部分をカスタマイズしたい場合、苦労する事が多いと思います。
Chinachu
Chinachuは七森中録画研究会が開発したオープンソースのソフトです。ソフトの名前の由来はアニメ「ゆるゆり」のキャラクターの名前が元になっているようです。そう言われるとこれもアニメに特化したソフトに思われそうですが、そうではありません。 普通(?)の録画サーバソフトです。
事前にB-CASカードリーダドライバ、チューナードライバ、録画コマンドのrecpt1などのインストールが必要になりますが、専用のインストールスクリプトを実行すれば必要なソフトウェアが全てインストールされます。Webサーバ機能、データベース機能も同梱されているので、細かい設定をする必要がありません。ある程度Linuxの知識が必要ですが、わりと簡単にインストールできます。アップデートも同じスクリプトでできます。
番組表、録画予約、ルール指定予約、ライブ視聴、録画番組視聴など基本的な機能がそろっています。視聴はブラウザ上でストリーミング再生できます。試してはいないですが、ビットレートや画面サイズを選択できるので、Chinachuを外部から接続できるようにしていれば外出先でも視聴できそうです(当ブログではSoftEther VPNによる外部接続を推奨しています)。
また、Raspberry Piのような普通のPC以外で動かしたい場合もChinachuならば可能です。foltiaはPC以外では動作不可ですし、epgrecでも可能ですが消費メモリを抑えたい場合には向いていないです。
欠点は、動作や設定に癖がある点です。例えば次の通りです。
- ルール指定予約が直感で設定できない(テキスト入力の項目が多い)
- ルール指定予約のジャンルの数が9つしかない(一般的なテレビより少ないので細かい指定ができない)
- 録画ファイルをまとめて消せない
- 録画予約時に予約が重複しているか分からない(スケジューラを後で実行して確認必要)
私が最初にインストール確認したのは2015年の4月頃ですが、GUIに関しては多少改善されたものの、使い勝手は相変わらず悪いです。そのため、オープンソースのメディアプレイヤーであるKodiとChinachuを連携させてTVで見られるようにしたり、使い勝手を向上させている人もいます。また、Chinachu用のAndroidアプリもいくつかあり、Androidであればかなり操作しやすくなります。残念ながらiPhone用のアプリは無いようです。
ChinachuにはREST APIと言うWUI(Webユーザーインターフェース)APIの仕組みが実装されています。前述したKodiのアドオンやAndroidアプリなどは、このAPIを使用してChinachuと連携しているようです。
ChinachuはLinux初心者だけど録画サーバを作ってみたい人向けのソフトと言えます。OSはUbuntu、Debianをおすすめします。CentOSだと少しインストールに苦労します。
当ブログでは以下のページでChinachuのインストール手順を紹介しています。
Chinachu Airへの期待
現在開発中の次期バージョンがChinachu Airです。当初、公式ページでは機能説明とともに以下の様なキーワードが並んでいました(現在はなくなっています)。
- 世界中どこでもクラウド予約
- P2P接続
- あいまい予約
- Webユーザーインターフェースの劇的強化
Airに関して現状公開されている情報は、こちらのWikiのページの内容のみです。
まだChinachu Airはリリースされていませんが、チューナー制御部であるMirakurunは既にリリースされています。Mirakurunは地デジ・BS/CSチューナーをLAN内で共有するためのソフトウェアです。Linux版のSpinelと言えば人によっては理解が早いかもしれません。MirakurunとChinachuを組み合わせて動作させることも可能です。先ほどのWikiの制御フロー図を見ると、Server部とOperator部の開発が現在も進行中であると思われます。
当ブログでもMirakurunを使ったChinachu録画環境を試してみました。ネットワーク経由で録画が可能になるので、チューナーを装着したPCでMirakurunを動作させ、Chinachuをそれとは別のPCに構築することも可能です。また、実験段階ではありますが、MirakurunはWindowsでも動作します。そのため、かなり柔軟なPC構成でシステムを組むことも可能です。
Mirakurunの出来が素晴らしいので、今後の進捗に期待しましょう。
現在、七森中録画研究会のページを見ると、謎のカウントダウンが始まっています。タイムアップとなるクリスマスに何らかの発表があるのかもしれません。久しぶりに確認した所、MiyouTV(Chinachu Betaと連携する全録画、コメントと番組同期再生できるシステム)とHarekaze(視聴ソフト)がChinach統合環境のラインナップに加わっていました。
当ブログでは以下のページでMirakurunのインストール手順とChinachuとの組み合わせ動作について紹介しています。
epgrec UNA
元々epgrecと言うソフトがあり、そちらをkatauna氏が機能拡張、性能向上したものがepgrec UNAです。本家は日経Linux2009年8月号掲載用に作られた録画予約システムで、2011年時点で開発が停止しています。脆弱性も抱えているので、今からインストールする場合はUNAのほうをインストールしましょう。
インストールはかなり大変です。Linuxの知識、少なくともWebサーバやデータベースサーバをインストール、設定できるぐらいの知識が必要になります。3つの録画サーバソフトの中で最もインストールが難しいです。
Chinachuでもインストールしたソフト(B-CASカードリーダドライバ、チューナードライバ、録画コマンドのrecpt1など)の他にも必要なものがあります。TSファイルからEPG情報を取得するepgdump、Webサーバ、MySQLをインストールし、最後にepgrec UNAをインストールします。結構大変です。途中で挫折する人が多そうです。要するにepgrec UNAはGUIを中心とするウワモノしか提供されないので、下回りは全て自分で用意しなければなりません。
別途FFmpegをインストールすれば、トランスコードしながらライブ視聴、MPEG4変換、録画番組のサムネイル表示などにも対応できます。しかし、ここまで設定するためにはepgrec UNA本体のphpファイルを編集する必要があり、Chinachuと比較すると非常に敷居が高いです。ちなみに、Chinachuはepgdump、FFmpegも同梱されているので、細かい設定をしなくても大丈夫です。
このように敷居の高いepgrec UNAですが、安定性が高く、用意されている機能的には他のソフトと比較して遜色はありません。個人的には番組表はこれが一番使いやすいと思います。操作にも癖がなく、ログが見やすい点も好印象です。単局表示で1週間分の表示ができるのも良いですね。
視聴は基本的にVLCメディアプレイヤーでしか行えないので、PC以外では視聴できません。スマホにもVLCはありますが、実際に試すとできませんでした。また、TVで視聴するにはMedia TombなどのDLNAサーバを別途インストールする必要があります。
欠点は既にお分かりかと思いますが、インストールが難しく、機能追加も自力で行わないといけない点です。デフォルト状態では他のソフトよりも機能的には見劣りします。機能追加にはFFmpegを後からインストールしないと駄目で、なおかつphpファイルを編集しないとFFmpegを十分に活かすことができません。アップデート方法としてファイルの上書きでしか提供されていない点も気になるところです。
そこら辺の面倒さも含めて分かっていないと使用できないので、Linux上級者向けだと思います。
当ブログでは以下のページでepgrec UNAのインストール手順を紹介しています。
まとめ
3つの録画サーバ用ソフトの内容を表にまとめました。手軽に使いたいならfoltia ANIME LOCKER一択です。
Chinachuかepgrec UNAを選ぶなら、自分の好みとPC経験による選択になります。ただし、スマホやタブレットで再生したいならChinachuになるでしょう(2016年1月22日追記:epgrec UNAでもスマホ再生用にHTML5対応を検討されているようです)。
foltia | Chinachu | epgrec UNA | |
---|---|---|---|
価格 | ダウンロード版 7,757円 |
無料 | 無料 |
インストール難易度 | PC初心者レベル | Linux初心者レベル | Linux上級者レベル |
ブラウザ上で ストリーミング再生 |
可 | 可 | 不可 |
スマホ、 タブレットでの再生 |
可 | 可 | 不可 |
追っかけ再生 | 可 | 可 | 可 |
DLNA | 対応 | 別途ソフト必要 | 別途ソフト必要 |
foltia | Chinachu | epgrec UNA | |
キーワード録画予約 | 可 | 可 | 可 |
MPEG4録画変換 | 可 | 可 | 可(別途FFmpeg必要) |
自動CMカット | 可 | 不可 | 不可 |
サムネイル表示 | 可 | 可 | 可(別途FFmpeg必要) |
録画自動延長 | 可 | 不可 | 不可 |
私の勝手なイメージですが、foltia ANIME LOCKERは高機能な痛車、Chinachuは組み立てが簡単なレゴブロックキット、epgrec UNAは半田付けが必要な電子工作キットです。いずれにしろ一長一短あります。
私が選択したのは
有料ソフトを使う気がなかったので、foltia ANIME LOCKERは最初から選択外でした。と言うことで、Chinachuとepgrec UNAのどちらが良いかの判断になりました。
機能的に差は無いと思うのですが、上の評価のところでも書いたようにChinachuは動作に癖を感じたので、結局epgrec UNAを選びました。epgrec UNAのほうがGUIの完成度が高かったのも理由のひとつです。スマホやタブレットで使うのであればChinachuがベストかもしれませんが、PCのみで使う場合はepgrec UNAのほうがベストだと思います。
関連記事
Chinachu、epgrec UNAのインストール方法やハードウェアに関する記事を本ブログに掲載しています。よろしければ、そちらもご覧ください。