映画「残穢【ざんえ】」を原作を読んで観に行きました
最終更新日:2016/05/22
映画「残穢」を原作を読んでから観に行きました。ホラー映画ですが、わざわざレイトショーで観ました。本記事ではあらすじやキャラクターについて触れていますが、致命的なネタバレは特にありません。
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原作について
本作は小野不由美の作品です。私は「十二国記」、「屍鬼」などを読んだことがあり、一応ファンではあるのですが、最近の作品はほとんど読んでいませんでした。「残穢」も本屋に並んでいるのは見たものの、発売当時は購入していません。しかし、ある本屋で映画の予告を流しているのをみて、興味が湧いて購入した次第です。本屋の策略にものの見事にはめられてしまいました。
本作は、主人公の女性、作家である「わたし(竹内結子)」が怪異の調査を進めていく様子をドキュメンタリータッチで描いている作品です。「わたし」は原作者の小野不由美自身として読み取れるため、あたかも現実に起こった事件の様にも読者は感じられます。他の登場人物では、「わたし」のご主人は綾辻行人なんだろうなと思える描写があったり、平山夢明など実在する作家も登場します。
この作品はホラーとしては、かなり変わっています。ホラーと言うと、びっくりさせる系の例えるならお化け屋敷のような作品が多いですが、本作は不気味な怖さがジワジワと続く、薄ら寒い怖さのある作品です。私は暇つぶしに怖い話のまとめサイトを読むことがあります。その怖い話のほとんどは落ちがなく、そもそも真偽不明なものが多いので(要するに作り話)、怪異の原因が語られることもほとんどありません。その様な話は怖い事は怖いのですが、何だか分からない不気味さがあります。残穢と言う作品は、その様な不気味さを増幅した怖さがあります。また、前述の通りドキュメンタリータッチで描かれているため、読むだけで穢れ(けがれ)が読者に伝染してしまうかのような恐怖感も憶えます。
この不気味さを感じ取る人は本作を怖いと感じると思うのですが、不気味さから何も感じない人は全く怖くないと思います。原作内の描写の1つに、人感センサーで点灯する照明が誰もいないのに付くと言うものがあります。この現象から「幽霊か何かが通ったのでは?」と思う人と、「センサーの故障でしょ」と思う人がいるように評価が真逆になるのです。実際、Amazonの原作本の評価を見ると星5つから1つまで満遍なく並んでいます。
原作本を最後まで読んで、面白かったけど映画にするのは大変だろうなと思いました。なぜなら、得体の知れない怖さを映像で表現するのは難しいと思えたからです。
ストーリーと原作との違い
怪談雑誌に連載を持つ「わたし」が読者の久保さん(橋本愛)から1通の手紙を受け取る所からストーリーが始まります。住んでいるアパートの1室の和室から畳を擦る(する)ような奇妙な音が聞こえると言う。しかし、その部屋もアパートにも自殺者や殺人といったいわくは調べても何も出てこない。「わたし」と久保さんが連絡を取り合いながら調査を進めて行くと、怪談に奇妙なつながりが見えてくる。
ストーリーは原作とほぼ同じですが、映画では話を分かりやすくするためにエピソードが結構削られています。原作ではアパートと家との位置関係が分かりにくかったので、非常にすっきりして分かりやすくなりました。しかし、年代をさかのぼって調べ、ゆっくりと除々に真実が明らかになっていくもどかしい過程が失われた気がしました。映画では2年間でしたが、原作では8年近くの歳月が流れています。
登場人物で大きく違うのは久保さんです。原作では30代の女性編集者でしたが、映画ではミステリー研究会部長を務める女子大生に変わっていました。
感想
星5つ評価で星3つです。原作ファンの目線で見ると星4つでも良いかとも思ったのですが、残念ながら映像化することによって、現実と地続きであるような印象が薄くなってしまったように自分には感じられました。原作の怖さを100とすると、映画は70ぐらいに落ちてしまった気がします。
映画としては原作の雰囲気をうまく表現しているなと思います。薄ら寒い不気味な怖さが現れていました。パンフレットを読むと原作者も満足の出来のようです。
竹内結子の淡々とした演技は、幽霊の存在を信じていない「わたし」の原作の雰囲気そのままでした。しかし、竹内結子自身は怖がりで、ストーリーを知らないまま仕事を受け、「なんで受けちゃったかな」と後日思ったそうです。
私は面白いし怖いと思いましたが、原作と同じでやはり怖くない人は全然怖くない作品だと思います。星1つ評価をされても、その人には縁がなかったねと言う他ありません。いずれにしろ、人にすすめにくい作品です。
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パンフレット
価格は720円です。サイズはB5版(182×257mm)の全ページカラーです。表紙が変わっていて、右端が焼け焦げたように途切れています。中身もスクラップブックのような感じで、写真やメモがテープやクリップ、ホッチキスで止めてあるように表現されています。各ページの背景も罫線のノートや方眼紙、原稿用紙だったり、乱雑な資料をまとめた様な面白い作りです。
肝心の内容は、ストーリー、登場人物の相関図、俳優陣のインタビュー、中村義洋監督と小野不由美の対談、建物の見取り図、プロダクションノートといった内容です。原作を読んでないけど映画に興味を持った人や映画を見たけど分かりにくかった人などは購入すると良いと思います。